アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー

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個人的に異世界チート無双ものは好きではないけど嫌いでもないし
信長のシェフとかむしろ好きなものもたくさんあるんですけど
一点、どうしてもダメなやつがあるのです。
 
それは、主人公が「現地の文化習俗に敬意を払わない傲慢パターナリズムおだいじ野郎」のケース。
この点についてまずおじさんの好みを簡単に線引きしておきましょう。
 
・凡人・職人が転生・タイムスリップして現代知識技術チート無双→わかる
・知識階級であるはずの現地民が明らかに池沼→演出上の都合ならまあ、わかる
・主人公が現地文化習俗に同化しないまま自己流を貫ぬいて不必要なコンフリクトを起こす→まあ必要なら
・主人公がイキって、現地の文化習俗や権威者を現代的価値尺度でもって過度に貶める→は?
・主人公がさらにイキって、現地文化のパラダイムシフトを強制しだす→死ね
 特に反撃できない形でやりこめたりするマウントシーンがあると最悪
 
という感じです。
 
無双に際しての説得力とか時代考証の正確性よりも主人公の態度なの態度!
別に英吉利や西班牙を擬人化したみたいな同時代のガンギマリオンが異文化を蹂躙するだけなら
対処を怠った後進文化の落ち度でちゃんちゃんなのですが
こんな不条理な天災みたいなので文化の尊厳がグチャグチャにレイプされるのはイヤなの!
いくら対象となる文化が奴隷制度とかの不条理極まりないものでも
それが既に歴史的流れの一部分になってしまっている以上(特にタイムスリップ系の場合)
現代倫理や現代法を持ち出して遡及的かつ一方的に糾弾して悦に入るようなのは下品でイヤなの!
戦国大名を人殺し犯罪自慢のクズ(現代法的観点)ってなじるののどこに魅力を感じるんだよ!
 
そういう点から、現代知識チート物の最初期の作品の一つである本作
理論武装上避けて通れないだろうと読んだのですが、主人公にイラついて仕方なかったわけですよ。
具体的に上述の観点からキチゲが溜まった箇所を列挙します(個人の感想です)
 
・ラ●スロットを初めとする円卓の騎士らを非人間・バーサーカー扱い(−10ポイント)
・屈伸運動を繰り返す修行者の首にゴムひもを括り付け、人間ミシン化して霊験あらたかな服を縫う(−50ポイント)
・健全デフレと可処分所得の概念が理解できない現地職人を大人げない形でやりこめ、逆上させる(−100ポイント)
・しかも、それが遠因で奴隷商人につかまり、アーサー王を危険に晒す(−300ポイント)
・全編にわたる修飾文節過剰気味の現地文化(特に教会・奴隷制度)に対する罵倒表現(−500ポイント)
・突然の1.5ページに及ぶテルール礼賛からの君主制批判(−1145141919ポイント)
 
と、「こいつら馬鹿だから俺が導いてやんないと」
っていう現地の価値観や伝統の連続性を尊重する精神などとはほど遠く
自分より無知な者たち(本人たちの落ち度ではない)に対する知的誠実さの欠片もない
マウントのために知識を仕入れていますみたいな似非インテリ特有の傲慢さが終始にじみ出ており
好みの真逆感あふれる作品だったのですが
結論を言うと、とても面白かったです。
 
中盤から後半にかけて主人公が傲慢さのツケを払わされる展開になってきて
最後の最後でスカっと爽快です。やっぱ、しっぺ返しっていいよね!
自分と違う価値観の相手を無闇に小馬鹿にしまくるのは、やめようね!
意図的に主人公の言動にヘイトを集めて、カタルシスを得させるお手本と言えるかもしれません。
(念のため、フォローしておきますが
 主人公が個人的な好みと乖離しているだけで
 ドイツ語インチキ魔法、新聞、アーサー王をお忍びで連れ出す、鉄条網あたりは普通に面白い
 特に鉄条網に電流を流して、騎士を万単位で感電死させるとことか、アメリカ的でとても趣深い)
 
また、一見すると教会・奴隷制・封建制などの旧弊批判を中心としたストーリーでありながら
最終的に先進的な改革者という人物造形の主人公の敗北で終わるという展開は
読み方を変えれば、傲慢なマウンティング先進文明人に対するトゥエイン流の皮肉ともとれるわけで
(ちょうど発刊時期の列強の対外政策とか考えるとね、しかたないね)
そういう視点で読み返すと、各々のチート無双と傲慢な言動が途端に味わい深いものになるのです
 
以上の点を総合的にみて、やはり異世界チートものの教科書であり、素晴らしく偉大な先駆者
というのが、本作に対する率直な印象でしょうか。
是非、ご一読あそばされませ。