2020-05-03

計去亡慟 No.1~No.3

Pocket

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
No. 1

教技聖省オハアム管理課任官適性検査 模範解答例そのいち
 
 
Q. あなたは人を殺さねばなりません。それはなぜですか?
 
 
A. 責務だから
 
 
Q. 最も美しい行為とはなんだと思いますか?
 
 
A. 自己犠牲
 
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
No. 2

「あらあら、お早いご帰還だこと。あの世が満員だったのかしら?」

まただよ。
しかし、今日は反論する気も起きない。
事務机に向かっているアスペリの方に少しだけ目をやってからすぐに戻した。
どうせ悪態つかれるか、からかわれるか。期待するだけ無駄。
私は彼女には何も返さずに、無視を決め込んで横を通り過ぎることにした。
通り過ぎざま、口元を隠すために巻いていた布をほどいた。少し当てつけ気味だった。
新鮮な空気と砂埃と服に着いた呪液が混ざった何とも言い難いすえたニオイがした。
マスクの口元が大きく破損しているのには流石に慌てたようで、それに気付いたアスペリは事務仕事を放り出して私の行く手をさえぎった。

「……だいぶひどい目に遭ったみたいね。
 報告は落ち着いてからでいいわ。湯浴みの手配をさせるから少し待ってて。」

アスペリは私が二階の自室に勝手に引っ込めないように階段に通じる扉の前に立つと、大声で従業員を呼び、私の入浴や着替えの支度をするよう指示を出した。それから、厳しめの口調でこう言った。

「あんた、体に呪液はかかってないでしょうね?
 破れたところと体を診るから、服の呪液に触れないように全部脱いで。」

呪液の性質――かかった部分が爛れて腐り、屍花兵の苗床になってしまうとかってやつ。
そう言えば今まですっかり失念していた。しかし、先ほどの二人とのやり取りでの無力感で、正直、少しどうでもいいとすら感じていた。
私は投げやりに左手の手袋を脱ぎ、アスペリが差し出したかごの中に放り入れた。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
No. 3

経過報告

6月28日
公務をご欠席。理由は発熱と倦怠感とのこと。
昼食・夕食ともに普段どおり召し上がる。水の摂取量は多少増。
 
 
6月30日
29日は公務に戻るも、ぶりかえされたのか再びご欠席。
朝食・昼食ともに少量の鶏肉の麦粥を召し上がる。
昼食後に嘔吐。吐瀉物の一部に黒いものが含まれていた。血が混じったものと思われる。
市長から市医の診察を打診されたが、社会通念上の理由により拒否。
 
 
6月32日
発熱が続いており、意識混濁状態。急遽本国に使いを派遣する。
部族法典違反を承知の上で触診を実施。全身にうっ血、嚢胞が認められた。
体毛により見えにくくなっていたため発見が遅れた。危険な状態。
 
 
6月33日
夕方ごろ嚢胞の一部が破裂し出血。
対処を試みるも、体外だけでなく内臓にできた嚢胞の破裂によるものとみられる吐血・下血がひどく、まもなく死去。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^