2020-01-11

忠尤無悲 No.1~No.3

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No. 1

いま私が遺跡探険に好んで関わろうとする若人にかけたい言葉ベストワンはこれ!
 
 
このクソとんまの親不孝! 私の苦労を増やすなバカ!
 
 
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No. 2

隙間に差し込まれたかなてこが、バギャッと激しい音を立ててつると甲殻を引き剥がす。
露出した胸元の根塊、ヤツの核が確認できた。

ずっと伏した姿勢で獲物を狙っていたドウ・ラ。この機会を逃すはずもない。
組み立て式の大型機械弓が大きな風切り音を立てて杭を放った。
普段の樹符とは違う、直接的な殺傷力を持つ質量弾が核をひしゃげさせながら押し潰す。
そのままの勢い屍花歩兵は標本のように壁に留められ動かなくなった。

「……ふう、おつかれさん。」
「インテラが元だと楽でいいわね。」

一般的なインテラ部族の身体には“肉”が少なく、必然、彼らの遺体は風化過程で腐敗液を生じにくい。
だから、仮に屍花兵化してしまっていたとしても呪液の危険性が低い。
普段よりも直接的に核を潰せるということである。
しかも――

「やっぱ収穫量も段違いだなー。」

ドウ・ラが摘んだ袋いっぱいの青白い花びらに、追悼を終えたラグも上機嫌。

「危険度と報酬額が釣り合ってないの、どこに言えばいいのかしらね?」

そうなのだ。
火を使わないで済めば、当然、火葬前に採取できる“特産品“の量は増える。
いいことずくめ。もうここの探険者はインテラ限定にすべきでは。

そんな邪なことを考えつつ機械弓の分解・梱包を終えた私の足を横合いからドウ・ラが軽く踏んだ。これは猫系や犬系のアニマノ間で一般的な親愛の表現である。彼女の少し固めの肉球の感触が伝わってきた。

「雑用だけになっちゃって残念ね。」

そんなことはない。私は平和主義だし。
とはいえ、やろうと思えば、他の樹符で援護できなくもなかった。
ただ、それを安売りするのはためらわれたのだ。
可能な限りオハアムを聖会の外に持ち出してはならないという命令の手前もある。

「しかし、お役ができるなら、立てられるといいんですが……」

二人と信頼関係が築けていないというわけではない。
が、ことオハアムに関しては、その後に事態がどう転ぶか分からない。
責任問題に発展するのはマズイ。
私が“芋納屋“以外を使わないのは、むしろ、「保身」が最も大きい理由だった。

そんな私の後ろめたさが透けてしゅんとしてしまったように見えたのか、二人は優しげな声色で軽く笑った。

「ま、派手な部分だけが仕事じゃねーよ。いい機会だから、戻ったら道具の買い付けや整備の場面に一緒に来てもらうか。そろそろ、裏方業務も分かっておいた方がいいだろう。」

ラグから予想外の提案。
命を預ける仕事道具に関わることが許されたということか。
二人から向けられた信頼と、それを返せない私の立場の差に胸がちくりと痛んだ。

ともあれ、これで組織を作るという聖務は一歩前進。
私の他の樹符についてはひとまず置いておこう。
いずれ適切な、そう、適切な機会が訪れるはずだ。
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No. 3

私がカラコルテに赴任して早120日、二月が過ぎようとしている。
なんてことはない。慣れれば都、明日はきっとよくなると思う。

ひとまず、例のアレのような危険がそう何度もなかったのは救いだった。
事故やら罠やらなんやらで、遺跡で人死にが出ることはあるけれども、屍花兵のようになるのは意外に少なく、いまのところ初回を除けば3回。月に2回ペースである。
なにより、屍花兵になっていたとしても、ラグとドウ・ラのおかげで、虎の尾を踏むような目には遭っていない。凄腕!
私の日常業務は基本的に座学であり、たとえ出動する羽目になったとしても、私は物影に隠れておいて、合図に合わせて「あおあおしき芋納屋の戦場」と言えば良い。

「あおあおしき芋納屋の戦場」、ああ「あおあおしき芋納屋の戦場」、私の安楽椅子。
余裕ができたら、オウムとか飼おうかしら。
世の中には聖歌を歌うオウムもいるらしいし、オハアムだっていけるでしょ。

不満といえば、ラグがあのオハアムについてはどうしても口を割らないこと。
だけど、それは焦らず粘ればいい。
変な仕事が増えるのも嫌なので、念のため本部にも内緒にしてあるし。

うふふ、明るく楽しい職場計画。
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