2019-12-28

三身一体 No.16~No.18

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No. 16

「憚る者ラトンナ」

聖会の偉人言行録、真ん中より少し前に名前が見つかる聖者の一人である。
ラトンナは、当時聖会の影響力が及びにくかった文明圏の外縁において、人々に大地の恵みをもたらす旅をしていたとされている。
その聖蹟は、双子海以南の大森林地域に多く見られ、彼女の足跡から森が生まれただとか、中には死者を蘇らせたとされるものすらある。
しかし、生命の在り方に介入するという神々の領域に踏み入り、理を乱したことが六神のヴィドルカとエーブの怒りを買い、塩の柱にされてしまったそうだ。
「憚る」とは、“憚らなかった”から戒めに付けられた号ということらしい。

それなら、私が討ち死にしたら、「足りすぎた」という号にしてほしい。
おお、トーデの加護あれかし。
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No. 17

うんち! うんち! ぶりりりり!

(強い筆圧の殴り書きと六本足の奇怪な動物の絵が描かれている)

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No. 18

ずじゅり、ずじゅり。

開けた通路の奥から、水を大量に含んだ毛布をひきずるような音が聞こえてくる。
それとほぼ同時に、マスク越しにおかしな匂いがしてきた。相当強い。
音が近づくにつれて匂いは刺激を増していく。最初甘さを感じた香りは、今では発酵臭とも腐敗臭ともつかない、嗅いだことのないようなニオイになっていた。

「このニオイ、なんです? おあぁあ???」
「……っ、おマル、あんたは少し下がれ。」

私を制した二人は今までとは明らかに違う空気をまとっていた。

「やっぱり“固まってた”みたいね。前のように上手くいくといいけど。」

ドウ・ラは腰につけていた複数のポーチのピンを外した。
そして、右手の小手に備えた小ぶりな機械弓に先端を尖らせた木片を装填し、左手の指と指の間に同様の木片を計3本握った。
一方のラグは、背嚢から尖った重りが括り付けられた組紐を何本か取り出して束ね、左手を通すようにして肩にかけると、かなてこを左手に、組紐の一本を右手に、それぞれ構えた。
今まで崩さなかったどこか余裕のあるにやけ顔もない。まるで戦支度。

それから二人は前方に伸びた通路の光が届かない地点を確認すると、そこにそれぞれカンテラを置き、自分たちは暗がりの物影に身を隠した。
私はドウ・ラにマスクの襟端をつかまれ、一緒に手近な突き出た木の根の近くに隠れることになった。

「ラグが良いって言うまで動かないで。ただし、さっきの合図は忘れずに。」

えっなになになに?
そうこうしているうちに音もニオイもどんどん近づいてくる。

ずじゅり、ずちゅり。ずじゅり……

嫌な汗が背中を流れ落ちるのを感じながら、ひどく長い時間待ったような気がする。
私はこの時のソレを今でもたまに夢に見る。嫌な記憶だ。
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