2019-12-22

三身一体 No.13~No.15

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No. 13

私たち三人はいつまでも一緒! 死んでも断ち切れない永遠の絆!
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No. 14

「次はこのガキども三人か。男二人に女一人。」

ラグが書類を見ながら忌々しげに言う。
横から覗いてみると、名前や年齢、滞在先などの記述が確認できた。
なんのことはない。その辺にいくらでもいるであろうフォーマの若者たちだ。

「何日目?」
「そろそろ二週間だ。」
「なるほど。“通常“の手配は一通りしたんでしょうね?」
「言われるまでもない。」

市長の言葉を受け、ドウ・ラの目がすうっと細くなる。
市長は三本目の煙草に火をつけながら続けた。

「一応、届け出は三層になってる。だから、そこまでは一通りやった。
 あとこういう青い馬鹿どもは、自分の力を過信するからな。一週間時点で四層も調査してある。」
「五層は……考えにくいな。こんな昨日今日来たばかりの連中が触れる場所じゃない。
 だとしたら、三層で未踏査区域でも見つけたか? お手柄っちゃあお手柄だが。」

応えたラグの口ぶりには若干の苛立ちが含まれていた。
湯浴みをしてきたのにひげは剃っていなかったようで、しきりにひげを指でつまもうとしているのだが、のどのあたりのが上手く抜けないらしい。癖なのか、それとも冷静でないのか。
ラグの心理状態を察したのか、ドウ・ラが間を取り持つように質問を続けた。

「調査でそれらしい場所は?」
「いや、全然だ。だが、正直、四層調査時点で余裕がなくてね。」
「業者は?」
「エダツブ商会の連中だ。」
「あいつらが手を抜くとは考えにくいわね。単に時間切れか。」
「六層からの帰り道でなんか見つからなかったのか?」
「往復七日もぐった後になんて冗談がきついわ。いくら私の鼻でも馬鹿になってて無理。
 そもそも、ついで仕事はこの人やらない主義だしね。」

ドウ・ラのとりなしで多少機嫌が直ったようでラグが会話に戻ってきた。

「いずれにせよ、三人か……前と同じように、それなりに支度が必要そうだな。
 バラバラにはぐれててくれりゃ良いんだがな。きっと固まってんだろう。厄介だな。」
「すまん。衛兵連中には伝えておく。」

三人とも言葉少なだが、的確に情報の共有をしているのだろう。
入り込める隙のない専門家同士の必要最低限の会話といった印象だった。
しかし、聖務を与えられている以上、黙っているだけではいけない。

「教えていただけませんか。仔細、私もまずいです知らないと。」

ラグとドウ・ラは互いに少し目配せをすると、面倒そうに説明を始めた。
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No. 15

連れ立って向かった遺跡の入り口、ラグとドウ・ラを見た守衛たちは体を硬くした。

「おう、昨日の今日だが待ってたぞ。
 お前ら葬式屋なんか全員つぶれちまえばいいのに。」

その中の一人、身なりから指揮官格と思われる背の高い鳥型のアニマノの男性が、くちばしの先を上げながら見下すような目で言った。長さの不揃いな羽角が風に揺れている。

「ああ、元締めから言われたんでな。そうイヤな顔すんなパアズ。それに死んでるとは限らないんだぜ?」
「そうであることをシスに祈るよ。一応、規則だから見せろ。」
「はいよ。」

手際よく書類が交わされていく。手慣れたものである。
出だしのセリフのわりに、この二人はそれなりに仲が良いらしい。「パアズ」と呼ばれたこの男とラグは、合間合間に暇を見つけては小突きあっていた。軽く叩いたり蹴ったり。

「……よし、で、このちみっこは?」

書類に今までにない名を見つけ、彼は、身体はラグの方に向けたまま、首だけ回して猛禽系部族特有の大きく鋭い目を私に向けた。
ドウ・ラの視線もそれなりに怖いが、パアズのは別格だ。“目で射すくめる”というのはこういうことを言うのだろう。羽毛の生え方のせいで眉間が逆三角形状になり、自然とにらみつけるような目つきに見えるのもそれを後押ししている。
というか、首だけほぼ背中の方に一回転してるの怖すぎ。

「新入りよ。」
「カァー、そりゃ気の毒にな。何を好き好んでこんなのに関わるのやら。」

ドウ・ラの言葉を聞いて、パアズの目の色は鈍い同情で満たされた。

「ま、いろいろあるのさ。」

含みを持たせたラグの言いようからそれ以上の詮索は得策ではないと判断したのか、パアズは私への関心を打ち切り、首を元に戻して手続き業務に戻った。
一通りの作業を済ませると、彼はラグに紫色の布が結ばれた交信の樹符を手渡した。

「とりあえず、いつものように1日単位でこちらから連絡を入れる。忘れるなよ前科もん。」
「分かってるよ毎度うるせぇな。ちょっと無視しただけじゃないか。いつもお前のタイミングが悪いんだよ。
 って、肩つかむな、痛てぇぞ馬鹿力!」
「仕事なんだから、野グソの最中だろうが毎度きちんと折り返せよな。ああ?」

パアズは少しにやけながら、ラグの肩にかぎ爪を立てている。やはり、繰り返されていた軽度の暴力は彼らなりの親愛の表現なのだろう。

私への注意が逸れたので、彼らがじゃれている間に少し入り口付近の様子を窺うことにした。
観光地向けの遺跡というにはかなり厳重な警戒の仕方である。入口周辺は砦もかくや、ぐるりと砦柵で囲んだ上、その外側には水で満たした堀を設けて跳ね橋を掛けるという徹底っぷりである。
また、衛兵の詰め所が実質的な地下への門になっており、甲虫系インテラの重装歩兵が二十人程度、四ヵ所ある櫓の上には鳥系アニマノの射手がそれぞれ二人ずつ配置についていた。

38号遺跡、ラトンナの寝台は、やはり何らかの重要なオハアムに関わる代物なのだろう。
教学聖省がこの遺跡を大祭幹級に指定しているのには確かな理由があるに違いない。
それに、遺跡探険者には少なからず各勢力の息のかかった者がいると思われた。私のように。
私は、私に与えられた聖務が予想以上に重いものであることを実感し、わずかながら満足感を覚えたのだった。
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